研究交流目標

 ゆで卵の白身に代表されるように、蛋白質の特徴は凝集することである。今日、蛋白質の凝集はアルツハイマー病やパーキンソン病、白内障をはじめとするさまざまな病気の発症に関わることが明らかとなってきた。病気と関わる蛋白質凝集は蛋白質の構造物性の最重要課題のひとつとして、約20 年にわたり世界で活発な研究が行われてきた。さらに近年、「細胞内における膜のないさまざまなオルガネラ」の実体は、蛋白質凝集であることが明らかとなり、凝集は生命機能全般を理解する新たな視点となっている。
 日本側コーディネーターはこのような研究領域において事業参加研究者と先駆的な共同研究を行ってきた。その結果、多くの病気に関わるアミロイド線維と呼ばれる凝集は、氷や塩の結晶など、物質の結晶と類似した状態であり、変性蛋白質の濃度が溶解度を超えた過飽和において、核形成を経て爆発的に形成することを示した。しかし、蛋白質凝集の統一的な形成原理には不明な点が多い。また、これまで実施した国際的な共同研究は多くの成果をあげたが、若手研究者の育成という点では、やるべき課題が残されている。
 本拠点形成事業では、「若手研究者の育成」に重点をおいて、国際的な共同研究や、セミナー、研究交流を実施して、「蛋白質凝集」、さらには「過飽和生命科学」の世界拠点を大阪大学に形成する。
 次世代を担う若手研究者の核は大阪大学において発生する。若手研究者の核は、アミロイド線維のように爆発的に伝播して世界ネットワークを形成する。以上により、本拠点事業は、生命科学の新たな学術領域の開拓と、それを担う若い世代の台頭に新たな潮流を作りだす。